- 第1回 2005年
- 自社JR広告を社内プレゼンで決める!
- 第2回 2007年
- 営業部も制作部も全員でアイディアを持ち寄る!
- 第3回 2010年
- 見る人の共感を呼ぶ広告を!
参加者
進行 | プレゼンテーター | |||||
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- 早 川
- 前回の広告は予想以上に反響があって、「クロスデバイス」という名前を広くPRできたと思う。何でもそうだけど、第2弾が最も難しいんだよね。前回を超える斬新なアイデアで引き出しの多さをアピールしよう。 じゃあ、一番バッターの青田君から。
- 青 田
- 前回が「クロスデバイス」という社名を刷り込むことに重点を置いたのに対し、今回は何をする会社なのかを打ち出すべきだと考えました。当社の二本柱は会社案内とWeb。そこでスペースを二分割し両者を呼応させようと、向かって左側を会社案内に、右側をWebに割り当てたんです。印刷物である会社案内は頻繁には作り直せないですよね。企業によっては随分昔の会社案内を使っているところも少なくありません。そこで、若手の発言にペーソスを匂わせて「ウチの会社案内、社長まだハゲる前だね。」というキャッチコピーを入れ、対して右側のスペースでは管理職が「最近の若い奴らは自己主張だけは強いんだな」と語るわけです。会社案内とWeb、若手とベテランという構図をダブルで打ち出した手の込んだプランです。
- 藤 木
- 説明を聞けばなるほどと思うけど、一見して何と何をアンチさせようとしているのか分からないな。 若手VSベテランという構図に、会社案内とwebがうまくシンクロできていないような気がするんだけど、どう?
- 仲 村
- 私もそう思います。一つひとつのコピーはそれ自体とてもおもしろいんだけど、互いがピタッとかみ合っていない感じがします。
- 青 田
- 確かに欲張り過ぎたかもしれません。会社案内だけ、Webだけということにはしたくなかったし、若手VS管理職という安直な広告にもしたくなかった。あれもこれもと抱え込んで、ポイントがぼけちゃったのかな。
- 片 桐
- ビジュアルがないのもつらいね。コピーだけで勝負するなら、もっとキレがあるものにしないと。例えば印刷物の価値にしがみつく管理職と、Webこそ最先端と主張する若手を熾烈に対抗させ、そこへクロスデバイスが割って入り、「うちなら両方うまく使い分けますよ」とオチをつけるとか。
- 松 田
- 新しいものには飛びつくけれど、すぐに飽きて長続きしない若手という着眼点は面白いと思います。反対に斬新な発想は苦手でも、長期的視野で冷静に経過を見るベテランという分析も当たっている。ユニークな要素がすぐ近くで拮抗しているのに、最後の決め手に欠けるという気がしますね。
- 早 川
- うん。「世代の意見」案というネーミングからも、青田君の言いたいことはとてもよく分かるよ。でも、会社案内とWebというテーマに引きずられてしまった気がするな。クライアントが複雑に考え過ぎて混乱しているところを、すっきり整理して道筋を示してあげるのがクロスデバイスの役目。そういう意味で、印刷物とWebの使い分けや相乗効果をうまくアピールできるといいんだけどね。じゃあ次は大和田さんの「バンザイ」案、お願いします。
- 大和田
- はい。あの、見ての通りなんですが。
- 藤 木
- プレゼンしろよ、プレゼン(笑)
- 大和田
- ある企業の社員が宣伝や販売促進に悩んでいて、クロスデバイスが知恵を貸したところうまくいき、みんなで胴上げして喜んでいるというシンプルな広告です。
- 片 桐
- 数式を使ったのはおもしろい。そもそも、数学には定理というものがあって、どんな数字を当てはめても法則は絶対ですよね。そういう意味では、クロスデバイスをプラスするとイコール好結果だよという自信を訴求できる。文字を排除してスパッと仕上げているところにも潔さが感じられる。
- 大和田
- 正直に言うと、コピーが思いつかず、結果的にこうなったんです(苦笑)
- 高 瀬
- イラストの部分を携帯電話の顔文字にしたらどうでしょう?
汗をかいている顔文字とか、笑っている顔文字とか。
そうすれば、もっと数式っぽくなるし、今風でいいと思う。
- 藤 木
- あまりにシンプルすぎない? 当社と組めばうまくいくということは表現できているけど、一体何をサポートする会社なのかが見えてこない。そこはどう考えてる?
- 大和田
- うーん、確かにこのままだと見ただけで終わっちゃうかも。素通りの危険性がありますね。その場で当社のWebへアクセスさせる仕掛けを組み込めるといいんですが…。
- 松 田
- 全国的に知られているビッグネームならこのままで通用すると思うけど、 社名すら知らない人たちに果たしてアピールできるかしら。正攻法の方が誠実さが伝わるのでは…。
- 藤 木
- いや、あえて無名だからこそユニークな企業であることをアピールしなくちゃ。思いきりトリッキーにやった方がいいよ。
- 早 川
- そこは意見が分かれるところだね。至れり尽くせりの広告は一歩間違えると野暮になる。逆にシンプルに寄りかかり過ぎると不親切や意味不明に終わってしまう。そのギリギリの線上に危うく立っている作品が一番鮮やかだと僕は思うんだ。 街でハッとする広告に出会った時は、「その手があったか!」って悔しくなるもんな。
- 片 桐
- 社長の広告論が始まる前に、僕の案を説明しましょう(笑)。1年間、JR広告を掲載してきて、当社の視点のユニークさを伝えることができたのではないでしょうか。次はどんな手法で来るのか期待している人も多いと仮定して(笑)、似たような路線でいくことにしました。
モチーフはCrossDeviceの頭文字Cを用いた視力検査。視力検査票って見つめるためのものですよね。じっと目を凝らして見てくれるんじゃないかと。社名の露出を抑えてでも、おもしろさにウエイトを置こうと考え、「クロスデバイスって何だかおもしろい会社だな」という印象を持たせることをねらいました。
- 青 田
- 発想としてはユニークですが、クロスデバイスの業務内容と視力に何の関係があるのでしょうか? 伝えたいことがわからない・・・。
- 大和田
- 確かに。コピーも今一つ意味不明。「片眼を交互に検査した後、両眼で検査してください云々」というのは、どういうことですか?
- 片 桐
- 右眼で見て、左眼で見て、最後に両眼で見るだろ。そうすると、CrossDeviceの文字を3回たどることになるじゃないか。つまり、社名を3回刷り込んだことになるんだよ。
- 藤 木
- あ、そういうこと? やっとわかった。
- 片 桐
- えーっ!! がっかりだなあ。
- 山 崎
- コピーがよくないんですよ。もっと違うアプローチの仕方があると思います。視力検査票を活かしつつ、当社のスタンスを伝えるメッセージが。例えば、時代の先を読む眼とか、核心を見つめるとか、そんな感じの・・。
- 片 桐
- そうだね。視力検査票にこだわり過ぎたかもしれない。そこから飛躍して含蓄あるキャッチにしないと絵が死んじゃうよな。
- 杉 田
- でも、駅のホームに視力検査表があるのは人目を引くと思いますよ。私だったら、思わず立ち止まってやっちゃうかも。
- 中 村
- CrossDeviceの文字を並べただけでは、ひねりが少なくないですか? 例えば、ホームの白線の位置に立つと、何か別のメッセージが浮かび上がって見えるとか、 もうひとつ発見をしのばせたらどうでしょうか。「なるほど、考えてるな」と思ってもらいたいですよね。
- 早 川
- 前回の広告のシリーズという意味ではおもしろいと思うけど、逆に「なんだ、またこのパターンか」と飽きられる危険性もあるんじゃないかな。いろいろ出来ますよと言っているわりには、いろいろやってないじゃないかと。 最初に言ったように、第2弾の難しさはここだよね。
- 宮 本
- では、僕の「ピットクルー」案を説明します。イメージはF1のピット。 ピット作業はマシンをリフレッシュさせるとともに、ピットインのタイミングや作業効率が極めて重要。ピット作業次第でレースの順位が左右されるわけですからね。こうした役割はクライアントの販売促進をサポートするクロスデバイスの仕事そのものと言ってもよく、これ以上のモチーフはないと考えます。
- 藤 木
- 異議なし!
- 松 田
- じゃなくて、ブレストしましょうよ(笑)。すごく分かりやすい広告ですよね。全力でバックアップするという視点がいいと思います。
- 山 崎
- 実際、F1のピット作業って7~8秒ぐらいの早業でしょ? スピーディーな仕事ぶりも当社と重なるんじゃないかな。
- 青 田
- この後、マシンはガンガン走っちゃうわけですね。クロスデバイスにピットインすれば、もう安心。まかせとけって感じです。
- 合 志
- うん、確かにいい。「あなたの“愛社”をメンテいたします」というキャッチコピーもウイットが効いているね。僕が一番気に入ったのは、チームワークのよさをアピールできているところなんだ。それぞれ持ち場があって、みんなが自分の役割をきちんとこなすことによって全体として大きな仕事ができる。 “あうん”の呼吸というか、結束力というか。一体感がにじみ出ているよ。
- 宮 本
- そういう意味では、スタッフたちが着ている服を全部レーシングスーツにして、チームカラーやロゴを入れるのもいいかも。 スタンバイOKな感じを前面に押し出し、「いつでも駆け込んで来て」と呼びかけたい。
- 早 川
- スピーディー、タイミング、チームワーク。これらはどれも、広告業界に欠かせないキーワードだね。 いいところに着目したな。
- 小柳津
- 宮本君の案が好評だっただけにやりにくいなあ。僕のは「伝える」案です。実は、前回のJR広告を見た友人から「何を伝えたいのかよくわからない」と言われたんです。「もっとシンプルにした方が伝わるんじゃないか」とも。それで、テーマを「伝える」ということに絞り込みました。モチーフはipodのiチューン。カラーの背景に黒抜きのシルエットを浮かび上がらせ、一発でわかるビジュアルをねらいました。時代とともに情報伝達の手段は変化してきましたが、 伝えることはいつの時代も必要不可欠。クロスデバイスはそんな不変的な情報伝達を助ける会社であることをメッセージングしています。
- 高 瀬
- 狼煙から始まっているのがいいですね。
- 杉 田
- 狼煙って何ですか?
- 一 同
- 爆笑
- 藤 木
- 狼煙っていうのはね。戦国時代に煙を焚いて…(以下、狼煙の説明......)
- 山 崎
- 瓦版、街頭テレビと徐々に進化して最後はクロスデバイスになるわけか。
- 松 田
- 狼煙のインパクトが強いだけに、最後のクロスデバイスが落ちとして締まらない気がします。狼煙、瓦版、街頭テレビと具体的な伝達手段が並んだ挙げ句にクロスデバイスでは抽象的。広告とかwebにすべきでは?
- 小柳津
- うーん、正直ここは僕も迷ったんですよ。でも、webをipodでどう表現すべきか分からなくて。それに、webだけに落とし込んでしまうと、当社がwebだけしか手掛けていないと勘違いされる恐れもあるでしょ。で、クロスデバイスで大きく括ったわけです。
- 藤 木
- うん、それでいいと思う。実際、メディアの変わり方は予測不能なわけだし、今後、どういう伝達手段が登場するか分からないから。要するに、このクロスデバイスのコマには、世の中の伝達手段がいかに変化しても、 時代に適した手法で的確に伝えていくよというメッセージが込められていると解釈できる。それよりも、このビジュアルをイラストじゃなくて、実写にしたら迫力が出ると思う。
- 一 同
- …
- 早 川
- 僕は個人的に、この「伝える」案が非常に気に入っている。ある意味、すごく広告らしいし、普遍的心理を分かりやすく表現して深さも感じられる。もしこの案が落選したとしても、いつか別のところで使いたいな。ただ、やっぱり最後のクロスデバイスのところがインパクトに欠けるよね。社名認知度が低いから、クロスデバイスと聞いてもピンとこない。ここは検討の余地ありだね。では最後。合志さん「球種豊富」案。お願いします。
- 合 志
- はい。コンセプトは「いろいろな展開が可能なクロスデバイス」。 他社との差別化ポイントは何かと考えた時、個々のクライアントに対して斬新な提案ができるということだと思うんです。それで、野球のピッチャーになぞらえてビジュアルを作成しました。つまり、このピッチャーがクロスデバイス。彼はいろんな球を持っていて、時と場合によって巧みに使い分けるテクニシャンなんですね。直球勝負で奪三振を決めることもあるし、カーブやスライダーを織り混ぜてバットを振らせることもある。打たせて取ったり、盗塁ランナーを刺したり、とにかく状況を踏まえて臨機応変に投げられる投手なんです。キャッチコピーは「攻めは、多彩です」。 この広告を見て、このピッチャー(クロスデバイス)を起用しようと思ってくれたらいいですね。
- 松 田
- 握っているボールにそれぞれwebとかカタログとかDVDとか書いてあって分かりやすいですね。背中がクローズアップされているので自然にボールに目が行くし、とてもいいんじゃないでしょうか。
- 合 志
- 最初はボールをピッチャーに握らせないで、下に並べようかと思ったんだけど、そうすると絵がつまんなくなるんだよね。握っていた方が、バッターの様子を観察しながらどの球を投げようか考えている心理が伝わるでしょ? うちもクライアントの前では涼しい顔をしてプレゼンしているけど、 そこに至るまでには散々考え抜いているわけだし、選びに選んだ一手ですよというニュアンスをにじませたかった。ほら、この指の一本一本の動きがミーティングの時の僕らの逡巡なんだよ。
- 山 崎
- なんか「闇練」っぽくていいですねえ。悠々と泳いでいるアヒルも、水面下では必死に足で漕いでいるというか。
- 仲 村
- そこまで言うと悲壮感が漂い過ぎ(笑)。でも、ちゃんと頭脳で考えていて、バッターの心理も読んでいるというところはクロスデバイスらしいんじゃないかなと思います。野球好きはおもしろがって見ると思いますよ。 実際、野球でゲームのカギを握るのはピッチャーですからね。いっそのこと、キャッチャーも描いてバッテリーで見せたらどうでしょうか?
- 宮 本
- それもいいな。あ、でも、ここで欲張ると広告が複雑になっちゃうか。 今までみんなの意見を聞いていて思ったんだけど、広告って引き算の論理なんですね。あれもこれも詰め込むと何が言いたいのか結局分からなくなっちゃう。潔くひとつに絞ってズバッとやった方が見る人の胸に刺さると感じました。僕は人の心を揺さぶる広告をつくりたいな。
- 藤 木
- いいねえ、若手の前向きな発言。
どんどん力をつけて、クオリティの高いものをつくってくれると、僕ら営業も仕事がしやすくなるよ。 大いに頑張ってくれたまえ(笑)。
- 中 村
- デザインの立場から言うと、どうしてもデザインセンスとかビジュアルのテイストって、そのデザイナーの色に染まりがち。私自身も、また前と同じようなデザインしてるって反省することが多いんです。自分のオリジナリティはもちろん大事だけれど、クライアントの個性や目的を最優先に考える努力をしたいなと思います。その上で、このピッチャーのようにいろんな球を使い分けられたらいいなと。自分を消して、でもどこかに自分らしさが謙虚に潜んでいる仕事が目標です。
- 片 桐
- そうだね。若いとどうしても俺が俺がという気持ちになりがちだけど、クロスデバイスの若手はちゃんと分かってる。偉い!
- 早 川
- だいたい出尽くしたみたいだね。いよいよ決勝戦の投票に移るわけだけど、どの案が選ばれたとしても恨みっこなしだよ(笑)。広告の出来もさることながら、こうやって意見を戦わせることに意味があるんだから。 一人で考え込んでいても煮詰まってしまうけど、みんなで考えを持ち寄ればアイデアはどんどんふくらむし、クライアントに対しても確信を持って提案ができるでしょ。そもそも、広告もwebもカタログもチームで作るものだからね。これからもチームワークを発揮して、互いに切磋琢磨しながら、クロスデバイスらしい仕事をしていこう。 みんな、お疲れさまでした。